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5話 強制転移!死の谷での規格外な冒険

Penulis: みみっく
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-25 12:39:28

「何を言ってるんですか! わたしなんか、すぐに死んじゃいますよ」

 ティナは思わず声を張り上げた。その声音には、心底からの恐怖と、そらの無謀さに対する強い抗議が込められていた。

「その杖を使ってれば余裕じゃない? ボクは前衛で剣を使うから、後衛はティナに任せたよ」

 そらは自信満々に言い放った。その口ぶりは、もう竜の谷へ行くと決定をしたような口ぶりでティナの意見を聞くつもりはないようだった。

「何で勝手に決めてるんですか! もお……」

 ティナが必死に抗議するも虚しく、抵抗もできぬままにそらの手に掴まれた身体は、一瞬の浮遊感の後、強制的に竜の谷の森の中へと、転移で連れてこられていた。周囲は苔生した巨木が生い茂り、薄暗く不気味な静寂が漂っている。湿った土と植物の匂いが鼻を突いた。

「はあ、勝手に連れてこられていますし……べつに、そらさんと一緒なら良いですけど……まったく……強引なんだから。他のことも、その、もっと強引にしてくれても良いのですけど……ね……」

 ティナは、誰も聞いていないのを確認してから、ぶつぶつと不満を極小の声で漏らした。顔は耳まで熱を帯び、桃色に染まっていた。彼女は先ほどの恐怖よりも今の状況に胸を高鳴らせている。

 そらは探索魔法を使わなくても周囲に中級クラスの魔物が数体、近くに気配がするのを感じていた。今回はティナと冒険を楽しむので、チート能力など探索魔法は使わないと決めていた。とはいえ、自分たちの安全は確保の為に目に見えない、強固な結界だけは即座に展開した。森の空気はピリと張り詰め、魔物の気配が濃い。

「探索しに行くよ」

 そらは周囲の警戒を怠らず、魔物の気配が濃い森の奥へと足を踏み出した。その足取りには迷いが微塵もない。

「ホントに行くのですか!?」

 ティナは信じられないといった表情で、目を大きく見開いた。彼女の表情には、この恐ろしい場所に来たことへの不安と、そらの行動力への驚きが色濃く出ている。だが、魔物のいそうな場所へ迷わず進んでいくそらの背中を見て、ためらいながらも「仕方ないな」という諦念と共に、そらの後を追うように付いてきてくれた。彼女は両手で杖をしっかりと握りしめ、周囲を警戒しながらそらのすぐ後ろを歩いた。苔と腐葉土の湿った地面を踏みしめる度に、微かな音が森の中に吸い込まれていった。

 そらとティナが森の奥へと進み始めたその瞬間、周囲の静寂を切り裂くように殺気が爆発した。

 突然、唸り声と共に一体の巨大なオーガが、木々の陰から飛び出し、大木のような太い腕に握られた、岩のようにごつごつした剣を振り上げ、そらに向かって、地響きを立てながら襲い掛かってきた。その一撃は風を切り裂き、凄まじい破壊力を秘めていた。

 そらは反応が早かった。一歩も引かず、腰に携えていた愛用の剣を鞘から抜き放ち、オーガの振り下ろした大剣を、真正面から受け止めた。

 ガァン!

 金属が激しく衝突する、耳を劈くような衝撃音が森中に響き渡り、その衝撃で周囲の地面が大きく揺れた。オーガの怪力に押され、そらの足は湿った土に深くめり込むが、体勢は崩れない。そらの表情は真剣そのもので、力込めた両腕の筋が浮き出ていた。

「ティナ、魔法攻撃よろしく!」

 そらは剣を押し返すように力を込め、オーガとの間合いを僅かに開けながら、後衛のティナに指示を飛ばした。殺さないように急所を避け、時間を稼ぐための防戦に徹する。剣と剣が火花を散らし、森の中に激しい戦闘の匂いが立ち込める。

「え、あ、はい!」

 突然の襲撃に一瞬、動揺したティナだったが、そらの切迫した声に我に返った。新しい杖を両手で固く握りしめ、すぐに詠唱を始めた。

「アイシクルショット!」

 杖の魔石が青白く閃光を放ち、無数の鋭い氷の槍が弾丸のように高速で連射された。凄まじい威力で増幅されたアイシクルショットは、まるでミサイルの群れのように空気を切り裂きながら、オーガの胴体へと、その全てが吸い込まれるように命中した。

 ドス、ドス、ドス!

 硬い表皮を貫通する、鈍い音が連続し、オーガは一瞬、動きを止めた。全身に多数の穴が開き、勢いを失ったオーガは、ぐらりと体を傾け、巨大な体躯を地面に叩きつけ、あっけなく討伐できた。氷の魔法が命中した場所は瞬時に凍りつき、周囲には冷気が僅かに漂っていた。

「ティナ、楽勝だったね。じゃあ次行くよ!」

 そらは、討伐したオーガを一瞥するだけで、すぐに森の奥へと視線を向けた。その表情には、高揚感と更なる探索への意欲が満ちていた。

「え? えっと……まだ、行くんですか?」

 ティナは、少し疲れた顔をしていた。戦闘の緊張と、規格外の杖から放出される魔力の反動で、肩で息をするような状態だった。

 低級クラスの魔物はそらが剣の冴えで瞬殺していくが、途中、中級クラスの魔物も現れ、そらが勢い余って数体倒してしまった。魔物の血と土の匂いが混ざり合う中、そらは申し訳なさそうに頭を掻いた。

「ごめん。ティナの獲物を倒しちゃった」

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